一般社団法人日本光学会は,広く光学分野における産学連携コンソーシアムの設立を援助するための仕組み「産学連携専門委員会」制度を新設いたしました。光エレクトロニクス産学連携専門委員会(以下,本専門委員会)はその第1号委員会として,2020年3月28日の理事会で設立が承認されました。あいにくCOVID-19による感染蔓延のため設立準備が遅れ,委員会活動を停止せざるを得ないのは遺憾であります。出鼻をくじかれた感はありますが,感染状況を注意深く見守り,できるだけ早い時期に活動を開始したいと考えています。
本専門委員会は,レーザーおよびLED光源を用いる光エレクトロニクスの分野において,産業界と学界の研究者が最新の科学技術情報を交換し,将来的な光エレクトロニクス産業の創生を目的とします。光学技術は,顕微鏡や望遠鏡などの結像光学機器と,光の諸特性を利用した遠隔計測機器を軸に発展してきました。それが,1960年のメイマンによるルビーレーザーとその後の各種レーザーの発明により一変しました。レーザーをベースとする科学技術は,量子エレクトロニクスやレーザー工学,フォトニクス,光エレクトロニクスなど多様な名前で呼ばれていますが,その特徴を一言で言うならば,光学と電子工学(エレクトロニクス)の融合にあります。
象徴的な例が情報通信を支える光通信技術の発展で,これ無しには現代のインターネット社会の出現は考えられません。レーザーの発明から60年,その間のレーザー関連科学技術の進歩はめざましいものがあります。物理光学,非線形光学,量子光学,レーザー物理,分光学,レーザー光化学などの基礎分野から,光通信,光情報機器,レーザー加工,エネルギー応用,光計測,生体医用計測などの産業応用までレーザーによって誕生した分野や生まれ変わった分野は枚挙にいとまがありません。レーザー技術は今や社会基盤として不可欠の技術に成長しています。
本専門委員会では,これらの重要技術を取り上げ,技術の現状から将来予測まで,幅広く議論します。また,必ずしもレーザーにこだわらず,LEDを用いたディスプレイや照明技術など,最新の光技術も取り上げます。これら広い応用分野をカバーするため,次の4つの部会を置き,それぞれが持ち回りで研究会を企画運営いたします。
第1部会(将来基盤技術)
第2部会(光デバイス・レーザー)
第3部会(光計測・バイオ)
第4部会(IT関連技術)
また,3月8日には『光の日』シンポジウムの開催を企画しています。『光の日』は光速度にちなんで定められた記念日で,2007年より毎年3月8日(休日の場合はその前後)にシンポジウムを開催しています。皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
本専門委員会は,独立行政法人日本学術振興会産学協力委員会「光エレクトロニクス第130委員会」を前身とし,その事業を日本学術振興会協力会より譲渡を受け,新たに日本光学会産学連携専門委員会として事業継続するものであります。学振第130委員会は「光と電波の境界領域研究会」の名称で1961年に設立されました。当初の目的は,赤外線からミリ波までの電磁波技術を,可視光から長波長へ,電波から短波長へそれぞれ延長することにより,未踏の周波数領域を光学的に応用することにありました。ところが,委員会の設立がレーザーの発明と時期が重なったこともあり,レーザー科学技術の基礎と応用に重点が移りました。このたび,日本学術振興会の基本方針により,2020年3月をもって解散いたしました。事業が日本光学会に移譲されたのちも,旧委員会の活動を継承し,さらに,高速通信技術や高速量子演算技術などこの分野の最新技術をテーマとして取り上げ,内容を充実させる所存です。